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君を想うよ


 外は雨だ。

 もうすぐ夜が明けてくるのか、空が少しずつ明るくなっている。

雨が止む気配はないが、俺は構わずバイクででかけた。

二人で行こうと思っていた場所へ・・・。

 俺と蘭・詩紋が京の都から戻ってきて、もうすぐ冬になろうとしていた。

俺の周りは普通の生活が戻り、いつもの学生生活が続いている。

唯一つ違うこと。今までの人生の中で一番大切だと思えるあいつが側にいないこと。

 元宮あかね

 こんなに大切な存在になるなんて半年前には思いもしなかったが、

今では俺の気持ちの中の大部分を占めている存在だ。

でもあかねには、もう二度と逢えない。

彼女は彼女の一番大切な人と違う時代で生きている。

俺と詩紋そして同級生のあかねは、龍神の力で突然京の都に飛ばされてしまった。

そこであかねが龍神の神子で俺たちが八葉だと知らされた。

最初は時代を遡ったなんて信じられなかった。

ましてや八葉として鬼や怨霊と戦うなんて・・・。

そんな中、京の都に蘭がいることが解り、助ける事が出来ないことに情けない気持ちや、

苛立ちを募らせる俺を、あかねが見守り励まし続けてくれた。

いつしか俺は自分でも気付かない間に、あかねの事を今までにない感情で見つめている事に気付いた。

あいつの嬉しそうな顔や、悲しそうな顔に一喜一憂し、どんどん気持ちが向かっていった。

今までこんな感情を持ったことはなかった。

最初はこの感情に戸惑いを持ったりもしたが、止める事は出来なかった。

けれどそれに気付いた時には、あかねの気持ちは俺とは違う人物に向けられていた。

常にあかねの側にいて命にかけて守ろうとした男。

不安になるあかねをそのもてる力すべてで支えていた男。

あかねの事を最初は龍神の神子としか思っていなかったあいつも、

あかねの純真さ強さに、次第に一人の女性として思うようになって行った。

怨霊との最後の戦いの時も、あかねはあいつと一緒に戦う事を選んだ。

 京での戦いが終わり、あかねは京に残った。唯一人思う、天の青龍だった男の許に。

 俺は海に着いた。

京から戻ったら、あかねを連れてきたいと思っていた場所だ。

この時期の海は、人もなく冬の肌寒さを感じた。

まるで俺の心を表したかのような寂しい風情を見せている。

せめて、もう少し早くこの気持ちに気付いていたら、

二人でこの場所に来る事が出来ただろうか?

京にいる時にこの気持ちを伝えていたら俺の気持ちを受け止めてくれただろうか?

 今となっては出るはずもない答えを欲しがってしまう。

ふとした瞬間にあかねの存在を求め、あかねの笑顔を求め、

それらが得られないことに気付き、心の中を隙間風が通り過ぎたようになる。

 今頃二人はどうしているだろう?

あいつの事だ、必ずあかねを幸せにするだろう。

それが解りすぎるほど解るから、あかねが京に残りたいと言った時も二人を応援した。

それでなければ強引にでもあかねを連れて帰ってきただろう。

 そろそろこの気持ちにもけりを付けなければいけないと思っているが、

もう少しかかりそうだ。

少しずつこの海に流していけばいい。

あかねと見ようと想っていた海に。

あかねの幸せを祈りながら。


この作品は、J-FRIENDSのCD「Love Me All Over 」のカップリング曲、
「君を想うよ 」を聞いていて思いついた曲で、タイトルも他に思いつかなかったので、
そのまま付けさせていただきました。
冬の海の砂浜で、座って遠くを見つめている天真君です。
あかねちゃんの相手として頼久さんにも出てきていただきました。
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