Destiny
暖かい春の日。桜の綺麗な季節、暖かな風がそよぎ、並木道には桜の花弁が舞う新しい季節の始まり。
今日はデートの日。
勝真さんと二人で映画を見に来た。
勝真さんが京都から現代に来て五年。
最初は戸惑う事もあったみたいだけど、今はこちらの生活にも慣れて楽しく過ごしている。
私は高校・短大を卒業して、今は花嫁修業中だ。
今日見に来た映画は、今人気のラブストーリー。
運命の出会いをした二人が色々な困難を乗り越えて結ばれるというハッピーエンドのお話。
「勝真さん、本当にこの映画でよかったですか?」
「花梨はこれが見たかったんだろう?俺は花梨と一緒ならいいさ。」
そう言って勝真さんは、優しく微笑んでくれた。
勝真さんの微笑みを見るたびに、私は満ち足りた気持ちになる。
紅葉が美しい京の都で最初に出会った人。
慣れない生活で私が不安な時、いつも私の事を気に掛けてくれた。
怨霊との戦いの時には命を掛けて守ってくれた人。
いつの間にか私の中で、とても大切な存在になっていた。
寂しい時、辛い時、勝真さんはいつも私が元気でいられるようにと励ましてくれた。
勝真さんと一緒にいるとどんな事でも頑張れると思った。
怨霊との戦いが終わって、勝真さんは京での生活よりも、私の時代での二人の生活を選んでくれた。
今では私達の交際は、両親共認めてくれている。
最初はあまりいい顔をしなかったお父さんも、今では本当の息子みたいに思ってるみたいだ。
最近では、勝真さんを交えて四人で晩御飯を食べる事も多くなった。
お父さんは晩酌を付き合ってくれるのが嬉しいみたいで、勝真さんが来てくれた夜は楽しそうにお酒を飲んでいる。
勝真さんも、最初はこうした家族の触れ合いに慣れない事もあったみたいだけど、
今では私の両親をとても大切にしてくれている。
明後日、私達は結婚式を挙げる。
今日は恋人としての最後のデート。明日は両親との時間を過ごしたほうがいいと勝真さんが言ってくれた。
明日の夜は四人で食事をする。
最初は家族三人だけでと遠慮していた勝真さんだけど、両親が是非にと言ってくれて、四人での食事となった。
明後日からは夫婦として新しい生活が始まる。
色々大変な事もあるだろうけど、勝真さんと二人なら一緒に頑張って行けると思う。
映画を見終わって、帰り道。
「良かったですね。今日の映画。」
「花梨。」
勝真さんが運転している車の中、前を向いたまま話しかけてきた。
「何ですか、勝真さん。」
「これからもっと大変な事もあるかもしれないが、二人で頑張っていこうな。
俺は花梨との出会いは、運命というよりも宿命の出逢いだと思ってる。
花梨に出逢って俺はいろんな物を貰った。今こうしていられるのもお前のおかげだと思ってる。
二人でこれからの人生を頑張って行こうな。」
私は胸がいっぱいになった。
宿命 ― 命が宿る前から決められた出逢い。
私も勝真さんと同じ気持ちだ。
京の都で出逢ってから今日まで、私も勝真さんが側にいてくれると思うと頑張ることが出来た。
これからもその気持ちは変わらない。
「はい。勝真さんと一緒に頑張って行きます。」
勝真さんは、微笑みながら頷いた。
これから始まる二人の生活は、勝真さんが言う通りもっと大変な事も沢山あるだろう。
喧嘩する事もあるかもしれない、悲しい事もあるかもしれない、
でも一人なら辛いことも二人なら乗り越えて成長して行けるだろう。
私達は、宿命の出逢いをした。
これから始まる新しい生活の中で、二人の人生を精一杯生きていこう。
私は勝真さんの横で、宿命の出逢いを神様に感謝した。
Copyright(c)2005 霧乃あかね All rights reserved
「遥かなる時空の中で2」での、初めての作品です。
タイトルの「Destiny」は、よく運命と訳されますが、今回は「宿命」という意味合いでつけました。
以前、テレビを見ていたときある女優さんが、知り合いの方に、「『運命』は命を運ぶけれど、『宿命』は命が宿っている。だから『宿命』の方が重いんだ。」
と言われたそうです。
この言葉を聞いて、私は「宿命」という言葉が好きになりました。
時を越えて出会い、色々な困難を乗り越えて気持ちが通じてる二人には、「運命」よりは命が宿っている「宿命」という言葉を使いたかったのです。
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