プロポーズ


「懐かしいね。」

 暖かい春の昼下がりに、私と天真君は、あの古井戸に来ていた。

 私たちを京へと連れて行った古井戸。

「みんなに伝わるかな?」

私は天真君に聞いてみた。

「さあな。」

 天真君は、優しく微笑みながらいつもの調子で返してきた。

 私たちが京の世界から帰ってきて何年かたった。大学を無事卒業した私たちは、それぞれに就職した。

天真君はバイクメーカーへ勤めだした。バイクの設計なんかをしていて、上司にも気に入られているようだ。

私は、近くの図書館に勤めている。

本の整理や新刊の登録。週に一度、幼稚園や保育所に行き子供たちに本を読んで聞かせたりしている。

図書館に勤めている人達も楽しい人達ばかりで、毎日忙しいけれど、充実していると思う。

 就職と同時に私たちは同棲を始めた。二人の両親にはもう公認の中なので反対はされなかった。

二人で暮らすという事は、大変な事も多かった、喧嘩もしたりしたが、やっぱり幸せだった。

 同棲を始めて二年が過ぎようとしていたある日、珍しく天真君が外で食事をしようと誘ってくれた。

素敵な雰囲気のイタリアンのお店で、とても美味しかった。

 その帰り道近くの公園を通っているとき、

「あかね、結婚しよう。」

そういって、プロポーズをしてくれた。私はびっくりして暫らく何も考えられなかったが、

「はい」

と、返事をした。天真君は微笑みながら、

「今日何の日か、覚えてるか?」

そう聞いてきた。私は暫らく考えていたが、思い出した。今日は私たちが京の都に行った日だった。

龍神の神子として、あの時代に行った日。

「俺、あの時代に行ったからこそ、この気持ちに気付く事ができたんだと思ってる。

あそこに行く前の俺は、どうしようもなかったからな。だから、今日プロポーズしたかったんだ。

俺達をあの時代へと連れて行ってくれた日に。」

そうして私達はお互いの両親に報告して、婚約した。

 蘭と詩紋君にも報告した。二人ともとても喜んでくれた。

 そして、私達はこの古井戸に来たのだ。あの時代へと続く道。

あの時代にいる仲間にも伝えたかった。龍神の神子と八葉として、鬼と戦った掛け替えのない仲間達。

「私達ね。結婚する事になったの。必ず幸せになるから見守っててね。」

「あかねは、必ず俺が幸せにする。これからも、どんな事からも守ってみせる。だから心配すんなよ。」

 私達はお互いに報告した。

 そのとき、古井戸の中に六つの宝珠の暖かい光が見えた!

「天真君、見えた?」

私は、今の光景が幻でない事を確認するように、天真君に聞いた。

「あぁ、ちゃんと見えた。」

天真君は、古井戸を見つめながら答えてくれた。

「ちゃんと届いたよね。」

私は天真君の方を向き聞いた。

「大丈夫だ。」

天真君は確信を持ったような、穏やかな表情で答えてくれた。

そして、私の肩を抱いて自分の方へ引き寄せ、二人見つめあいお互いの唇を重ねた。そのとき二人のま

わりを優しい風が吹き抜けた。

まるで、京にいる六人が二人を祝福してくれているかのように。



TOP
ABOUT
更新履歴
NOVEL
作品集
お気に入り
BLOG
mail
LINK
霧乃のお勧め品紹介
サイトマップ

Copyright(c)2005 霧乃あかね All rights reserved

この話も以前「MapleGanache」様のサイトで掲載していただいていた作品です。
この作品も、タイトルのデータを無くしたので、以前とはタイトルが違うと想います。
私の創作作品第一作目で、記念すべき作品です。
私の中の天真君は、どうも穏やかな雰囲気らしく、あまり感情の起伏が激しくないようです。(あかねだけかもしれませんが)
読んだ感想など戴けたら嬉しいです。
下の「mail」からメールフォームへどうぞ。

inserted by FC2 system